写 経 の 手 引 き

作法
写経は習字ではないので、きれいに書くことを望むのではなく、丁寧に書くことを心がけるべきである。先ず始める前には、経典の読誦に当り行なっているように、口を漱ぎ手を洗い、香を焚き、心を静める。

書き方
縦書きである。写経に用いる仏典は漢訳のものですから、右から左への縦書きになる。
姿勢を正して、一字一字心をこめて書く。
仏像の制作に「一刀三礼」と云う言葉があるように「一字三礼」と心得るべきである。

用具 
墨を磨り筆を用いるのが一般的であるが、用具には強いて拘る必要はない。鉛筆やペンなどでも差支えは無い。ただし、簡便さを理由に選ぶのは避けるべきである。写経は修行であるという事を肝に銘じなくてはならない。
市販の、写経専用の紙を用いる場合に、枠があるのは余白の狭いほうが上である。

順序
一行あけて経題(内題)を書く。「仏説摩訶般若波羅蜜多心経」と、本文よりやや詰めて書く。
般若心経の場合は、一行十七字縦書きで書く慣わしである。依って、本文は十五行である。
呪は行を改め、呪と呪は一字あける。
奥題は行を改め、略して「般若心経」と書く。

写し誤ったときの決まり事
書き損じたと云って新たに書き直すことはしない。一旦書き始めたら最後まで書き通す。その為に、写し誤ったときの決まりごとがある。
 <誤字の場合>
その字の右横に点を打ち、その行の十七字目下をやや空けた処に正しい字を書く。
 <脱字の場合>
その字の入るべきところ(上の字と下の字との間)の右横に点を打ち、誤字の場合と同じ要領で処する。
 <衍字の場合(同じ字を続けて書いてしまった場合)>
その字の右横に点を打ち、その行を詰めて書く。無理な場合は次の行を詰めて書く。
 <倒置の場合>
字が前後した場合には、その二字の間右側に「γ:ギリシャ字ガンマに似ている」を書く。
 <脱行の場合>
気がついた時にその行を書き終えてから、一字目の上に点を打ち、挿入すべき所の前の行と後の行の一字目の間の上側に点を打つ。
これらの「点」は見易いようにと言って大きくはしない。

奥書の書き方
奥題との間を一行あけ、幾分下げて書く。なければ省く。
祈願の場合 為<願意>也  願意の例  家内安穏 身体健全 など随意
廻向の場合 為<○○家先祖代々各霊位>菩提也 或いは 為<戒名>菩提也

末尾の行の書き方
一行あけ、相応に下げて書く。
令和年月日於<書写した処>
住所を書く場合には此処に書く。(書かなくてもよい。)
願主<氏名>謹書。 (判を押してはいけない)

納経
書き終えた写経は、自分の手元に保存しておくのではなく、縁のある寺院に納めます。そうする事によって、奥書の願意が納経した寺院の御本尊と結ばれることになります。
諸言
ここには、般若心経を例に取上げておりますが、他の経典等の写経はこれに準じたらよい。
寺院で行う場合には、相応の作法や次第があるが、自宅で行う場合には拘ることなく、只、仏様に向き合っていると云うことを、肝に銘じて行うとよい。
以上


般 若 心 経   理 趣 経(百字偈)   観 音 経(偈文)  

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