与論島の言葉を、標準語に改めると、心情の機微を十分に理解することが出来ないので、先人達の心をくみ取って欲しいとの願いから、カタガナ表記をして、下に標準語を付しております。諸作法は各家の習わしに依り異りをみます。
元日
早朝五時から六時の頃に起きて若水を汲み、その水で洗顔をして身を浄めてから、元日のお膳を造る。元日のお膳の他に酒一対と塩にピムンを揃えたお膳を用意する。この膳は、出産、誕生日、入学、卒業、受験合格等祝い事の全てに共通する。出来上がったら身だしなみを整へて、ウプ(プク)ドゥクとカミドゥクにお供えをして、新年のお祈りをする。ウプドゥクには、家と屋敷の神、カミドゥクにはご先祖を祀ってある。床の間は常時清潔にしているのは、当然の事であるが、元旦は特に念入りに浄めておく。
チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ、シュウヤ平成十六年ヌ申ドゥシヌミードゥシナティ、門松タティティ、鏡餅シーティ、ピムントゥウミキヌイッチーシーティ、フトゥシイチネンジュウヌ、キガングリューガン、シャービューシ、チットウトゥガナシ、サキスグチャルウヤイャープジパジミ、アトゥカラカミナティウヮチャルウヤガナシ、チットウトゥガナシ、フトゥシイチネンジュウ、フドゥエークンヤユクマサイ、ケンコウアラチ、ヤンビョウキアラサンガネーシ、マタ、ニャマヌシグトゥパミチキリバドゥ、アラチイカリティ、ウヤカミサマヌウトゥイムチシラリャービュークトゥ、ユカフトゥバッカイムンチカチ、サンミンバッペーシミランガネーシ、アラサチタバーリ、チットウトゥガナシ、
マタ、チュラキバイシミティタバーリバドゥ、クヮーウマガヌフトゥ、チュパラヌフトゥ、シマヌフト、ゥシラリャービュークトゥ、チットウトゥガナシ、マタ、タビシマウチパーヌクヮウマガビンチャー、チュパラシンデーヌフトゥ、ミッシュークミーマンティタバーリ、フトゥシイチネンジュウヌグリィーガンチャ、ヤーヌキネーウチスルウティ、ウヤイャープジヌカミサマヌメーナンティ、グリューガンシャービュークトゥ、ミッシュウク、ミーマブティタバーリ、ユカチゴーウバッカイ、アラチタボーリ、チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ。
【訳】
チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ、今日は平成十六年の申年の新年で、門松立てて、鏡餅供えて、干物と御酒の一対を供えて、今年一年中の、祈願御礼祈願、致します、チットウトゥガナシ、先の世を過ごした御先祖(一族の先祖)をはじめ、後から神になられた親(家族の先祖)ガナシ、チットウトゥガナシ、今年一年中、昨年よりは良く増い(なおさらに)、健康を頂き、病み病気させないで、また、今の仕事を励んでこそ、蓄財することが出来て、ご先祖様のおもてなし(ご供養)出来ますので、良い事ばかりを思い起こさせ、考え違いをさせないで、下さいますように、チットウトゥガナシ、また、良き働きをさせて頂ければこそ、子孫の事、親戚の事、島中の事、御出来ます、チットウトゥガナシ、また、旅島内外の子孫達、親戚達の事、心底より見守ってください、今年一年中の御礼祈願(御祈願)を、うち揃って、ご先祖の神様の前にて、御礼祈願(御祈願)致しますので、心底、お守りください、良い都合ばかりを(良い出来事ばかりを)、与えて下さい、チットウトゥガナシ。
結婚
チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ、シューヌ大安吉日ヌ、フガニ(富金)ビナイ、◯◯家長男◯◯トゥ、◯◯家ヌ次女◯◯トゥガ、ヲゥナグヌホウヌ、ウヤガナシパジミチュエークヮトゥ、ヲゥイガヌホウヌ、ウヤガナシチュエークヮーヌミーマブユールナー、メデタク、結婚シャービティ、フマナイ一同ウチスルウティ、ウヤエープジカミサマヌメーノンティ、グリイガンシャービューシ、チットウトゥガナシ、
新郎新婦互イニ、一生トゥジマユンガネーシタバーチティ、クヮーウマガサカイアラチ、イシヌミーハニヌミークリティタバーチティ、ヤンビョウキシミティタバンガネーシ、ゲンキアラサチタバーリバドゥ、ウヤエープジカミサマヌフトゥ、チュパラシンデーヌフトゥ、シマヌフトゥクニヌフトゥ、シミティタベンガネーシ、グリューガンシャービュークトゥ、ミッシュークミーマンティタバーリ、キャーサルピチュナイヤミチフミラリティ、トゥサルピチュナイヤキチフミラチユカキバイシミティタバーリ、チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ。
【訳】
チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ、今日の大安吉日の、フガニ(富金)日に、◯◯家長男◯◯と、◯◯家の次女◯◯とが、女性の方の親御さん初め御親戚と、男性の方の、親御さん御親戚の、見守る中、芽出度く、結婚なさって、此処に一同うち揃って、ご先祖の神様の前で、御祈願致します、チットウトゥガナシ、
新郎新婦互いに、一生納まるようにしていただいて、子孫繁栄し、イシヌミーハニヌミー(石の身、金の身)を与え下さって、疾み病気させて下さらないように、元気を与えて下さればこそ、御先祖神様の事、親族一同の事、島の事、国の事、させていただくように、御祈願申し上げますので、心底よりお守りください、近き人には見て褒められて、遠い人には聞いて褒めさせて良い働きをさせて下さい。チットウトゥガナシ。
イシヌミーハニヌミーとは、「石の身金の身」のことで、丈夫な体ということ。金は、お金ではなくて、金属のこと。
ヤンビョウキとは、疾む(精神的な病気)病(肉体的な病気)
出産
以下を適宜に入れる
ナシサカイシラリティ ナシ(生し)サカイ(栄) 子孫繁栄
イシヌミーハニヌミークリティタバーチティ イシヌミ(石の身) ハニヌ(鋼鉄の身) 頑丈な肉体
ヤンビョウキシミティタバンガネーシ ヤン(疾む) ビョウキ(病気)
プウブンクリティ プ(報:良い果報) ウブン(御分:分け前) 良い果報をもたらして
百二十ヌクレーアラチ クレー(コレー:喰れー) アラチ(有して) 百二十歳までの食い扶持を与えて
マンポウヌカミガミ 万方の神々 八百万の神々
通夜
チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ、シュウヤウレーガカミサマナタルピーナティ、ニャマカラハガディエーシャービランチチ、パラジカティハタイティウヮーリシチャクター、ウレェンチャーナグリサソウディティ、シママーギヌピチュンチャーウヮーチ、ハガマンチチタベイ、ミッシュウクアリガタサイビュイ、トウトゥガナシ、ニャマカラマージンハガディ、ウトゥイムチシャービラン、チットウトゥガナシ、
チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ、ウレェヤシュウヌ◯時◯分、フヌユウトゥ、クヮーウマガビンチャー、チュエークヮートゥ、ワカリュウルサダミナティ、カミサマナティウヮーチャイビュイエーシガ、チットウトゥガナシ、
ニャマンタナ、ウレーガチュムチャサシチウヮーチャル、クヮーウマガビンチャーヌ、カワイガワイミチ、ニャマヌユヌナカヌ、ススドゥルイガクヌチカランフウティ、カミプトゥキヌチカラカティンシガティミチャシガ、フヌユウナイウマリタルムヌ、イッチーコネーナユンチュル、コトワリヤヌギラランヌクトゥチチ、アキラミティ、ウレーガウマリティカラ、シューヰンタナヌフトゥンチャーシヌディ、ウトゥイムチシャービラン、チットウトゥガナシ。
頃合を見計って
チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ、オ通夜ヌギヤナラシャービュークトゥ、ニャマカラアトゥ、ヤーヌキネーチュパラシ、ユートゥギシチ、ウトゥイムチシチイェーシャービューシ、シュウダキドゥウレーヤーノンテャ、ユフウティウヮーラリュークトゥ、ユカウトゥイムチシラリティタベンシャーリ、チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ。
【訳】
チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ、今日はあなたがカミサマ(亡くなった)日なので、これからお勤めをしようかと思って、親戚に知らせて来てもらったら、あなたを悲しんでもらって、島内全ての人々がおいで下さり、お参りしようとなさっておられる、本当に有難いことです、有難うございます、今から一緒に礼拝しお勤め致します、チットウトゥガナシ、
チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ、あなたは今日の◯時◯分、此の世と、子や孫たち、親族と、分かれる定めになって、カミサマになっていらっしゃておられますが、チットウトゥガナシ、
今まで、あなたが可愛がってこられた、子供や孫たちの、代わる代わるみて、今の世の中の、進んだ医学の力も借りて、神仏の力にもすがってみたが、この世に生まれた者、いつかは亡くなるという、理は逃れることは出来ないと言って、諦めて、あなたが生まれてから今日までの事を偲んで、お勤めいたします、チットウトゥガナシ。
チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ、通夜の儀は済ませましたので、これから後、家の者親戚で、夜伽して、お勤め致しますので、今日だけがあなたの家では、寝ることが出来ますので、心からのもてなしを受けられてください、チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ。
葬式
チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ、シュウヤウレーンチャー、ウレーガエーバドゥナイルトゥクルカティ、トゥイムチシリバドゥナイクトゥ、ウレーヤーノンティヌ、サイゴヌアサバンウェークトゥ、ウップーサエーシグンディタバーリ、チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ。
【訳】
チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ、今日はあなたを、あなたが往くべきところに、お送りしないといけないので、あなたの家での、最後のご飯ですから、十分にお召し上がりください。
葬式当日は、十一時三十分までに霊前への食事を準備させてお供えをする。通夜からここまでがマチイニンの役目である。
年回忌
チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ、シューヤウレー◯◯回忌ヌトートゥアタヤービュンナティ、アーシカマカラパカメーシチウサリシチ、ヤーヌカミサマヌメーノンティ、ウヤエープジヌメーチキドーリ、○○回忌ヌシーポーマーギ、タイプシクネンガネーシ、エーシャービューシ、チットウトゥガナシ、
ハガンビキヌクヮウマガ、チュパラウチスルウティ、ハガディエーシャービュークトゥ、イショウシャプウラシャシ、ウップーサエーシグンディ、ウヮーチタベンシャーリ、チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ。
【訳】
チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ、今日はあなたの◯◯回忌の忌日に当たり、墓参りをして申し上げ、家の神様の前(タカドゥク)で、ご先祖の仰せの通りに、○○回忌の諸作法を過不足なく、いたしますので、チットウトゥガナシ、供養に参加すべき子孫、親族うち揃って、供養させて頂きますので、沢山存分にお召し上がりください。チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ。
三月三日(サンガチサンニチ)
女の子の節句なので、女の子の成長に相応しい文言を入れて、無事の成長を願い先祖に祈願する。
五月五日(グンガチグミチ)
男の子の節句なので、男の子の成長に相応しい文言を入れて、無事の成長を願い先祖に祈願する。
ショウガチドウトゥ
チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ、ウマナイ、ウンノンティカミナティウヮーチャル、ウレーウチパーヌクァーウマガビンチャーヌ、チュチキヌキレーマムティ、ウチスルーティチュラヲゥガンシャービュークトゥ、チケームヌグトゥアラサンガネーシ、チュラウキトゥイシチタバーチティ、チュラヲゥガンシミティタベンシャーリ、チットウトゥガナシチットウトゥガナシ。
【訳】
チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ、此処に、海で神となられた(海難事故に遭われた)あなたの子孫が、一月の禁忌を守って、うち揃って、心より供養いたしますので、障りや難事を生じさせないで、快く受け取っていただいて、衷心より供養をさせてくださいますように、チットウトゥガナシチットウトゥガナシ。
パチガチドウトゥ(八月の高神祀り)
チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ、シュウヤウレー、タカガミサマヌマツリナティ、ウヮーチハガンビキヌ、◯◯◯ガ、スルウティ、タイプシクネンガネーシ、ムカシカラトゥウチュルシーポーシチ、チュチキメーカラミツツシディ、サイカイモクヨクシチ、ウヤウヤシクハガミャービューシ、チュラウキトゥイシンシャァーチタバーリ、チットウトゥ、チットウトゥガナシ。
【訳】
チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ、今日は、貴方様、高位の方のお祀りしなりました、(此処に)来て勤めるべき(者)○○○が、揃い、過不足なく昔より一堂に会して、一月前から謹んで、斎戒沐浴して、恭しく拝し奉る、快く御納受ください、チットウトゥ、チットウトゥガナシ。
エープジ
チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ、シューヤ七月ヌ十三日アタヤービュイ、エープジヌパジミエービュークトゥ、ウップーサ、クヮーウマガヌキバタル、ターパッタイヌチュクイムジクイ、ウンヌイシュムヌマーギ、エーシャービュークトゥ、ウップーサエーシグンディウヮーチタバーリ。
【訳】
チットウトゥガナシ、チットウトゥガナシ、今日は七月の十三日に当たりまして、お盆の始め(の日)でありますので、沢山、子孫が働き成した、田畑の作物、海浜の漁獲を奉げますので、存分に、お召し上がりください。
先祖伝来の諸作法を変更しなければならなくなった場合
チュウテイサマヌメーチキデービュークトゥ、ニャマカラヤガシガシシミティ、ウトゥイムチシチエーシャービューシ云々とか、ヌーグトゥンチュウテイサマトゥ、マージンデービュークトゥといって、申し上げてからする。
【訳】
チュウテイサマの仰せででございますから、今からはこの様にして、供養させて頂きます云々とか、何事もチュウテイサマと一緒でございますから云々と、サーリワキしてから変更する。
「チュウテイサマ」とは、朝廷(明治新政府)のことをいう(詳細は供養の項参照)時の推移による島民の心の移ろいを知ることが出来る。
月命日やその他日時を忘れた時は、サンカヌシニャナチタバーリを入れる。
チットウトゥガナシ、ウレーミジヌパチハガンヤ、キノウヱータイヱーシガ、シグトゥナイマミクリティ、ウトゥシワシリシチャイヱービュイシガ、ユカサミチムーティヤアイビラヌクトゥ、サンカヌシニャナチウヮーチティ、シューシーティエーシャービュークトゥ、ユッターシャチュラウキトゥイシンシウヮーチティ、イェーシグンディタバーリ、ミーマンティタバーリ、チットウトゥガナシ。、
【訳】
チットウトゥガナシ、あなた様のミジヌパチハガン(月命日)は、昨日でありましたが、仕事にまみれて、落とし忘れてしまいましたが、適当にしていいと思っていたのではないですから、サンカヌシニャナチウヮーチティ、今日お供えさせていただきますので、快く受け取っていただいて、十分にお召し上がりください。お守りください。チットウトゥガナシ。、
(サンカヌシニャナチタバーリとは、正確には定かでないが、思うに、サンカは今日一般に差別用語として用いられている人々指して、忘れたのは、私の所業ではなく、その方々に起因するものです。と、自分の不始末を他人に転化している。と、解釈することができるのではないか)
祈願語句
ナンソイアラサンガネーシ 災難無きように
ティーピチャウミマーブイシチ 手足を御お守って(藁の草履や、素足で野良仕事をしていた時代には、刺が刺さりそれが原因でハショウフとなり死亡する事がよくあった)
フシグマチ 富をいっぱいにして
プウブンチキティ 果報御果報を付けて (果報、御果報と重ねることにより強調される)良い果報 豊かな身の上
ヲゥガンチミティ 拝み詰める 心底より御祈願します
その他
与論島では、祈願の対象は、特定の神仏ではなくて、自分たちの先祖である。
「チットウトゥガナシ」と云う語は「トウトゥガナシ」を強調する意味で、「トウトゥ、トウトゥガナシ」から「トッ、トウトゥガナシ」さらに「チットウトゥガナシ」と変化したものである。または、「フツ(仏)トウトゥガナシ」「フッ、トウトゥガナシ」「ヒッ、トウトゥガナシ」から変化したとも云われている。冒頭や末尾に使う時には通常繰り返す。また、文中には、一息ついたり段落を変えたりする場合に用いる。ちなみに、「トウトゥガナシ」とは、「尊愛し」を当て「尊く身にしみ入る」から「ありがとうございます」の意味を表すようになった。